おじいちゃんと孫の話
この前ふと耳にした、とあるおじいちゃんと孫のお話を書きます。
長くないので是非読んでほしいです。
数年前、病床に臥したおじいちゃんがいた。
「余命幾ばくもないだろう。」医者がそう言うように、おじいちゃんの細い息はかすかに漏れるくらいの出入りで、会話も蚊の鳴くような声であった。
そんなおじいちゃんのために何かできることはないのだろうか。孫は必死になって智恵を絞る。
その時ふと、おじいちゃんがよく連れて行ってくれたパン屋を思い出した。
そこで買うのは決まってアンパン。
「ここのアンパンは、わしがガキの頃から食っちょるけえ。わしの身体の一部、人生みたいなもんだなあ。ほれ、アンがうんめえべ。」
甘いものが大好きなおじいちゃんはよくこう言った。
これしかない。孫はアンパンを購入し、おじいちゃんにプレゼントした。
「最後にご馳走持ってきてくれたんかいな。わかっちょるで、アンパンやろ。」
おじいちゃんの少しばかりの笑顔に子供らしさが垣間見えた。
思い出の詰まったアンパンを一口。
今までの人生を振り返りながら味わっていたのだろう。
「うんめえアンパンだな。ありがとう。」
その日、おじいちゃんは静かに息を引き取った。
孫は涙した。今まで本当にお世話になったおじいちゃん。これだけで感謝の気持ちをあらわすことはできない。
けれど、甘いものが大好きなおじいちゃんの好物であるアンパンを最後に届けることができてどこか安心した。
静かな病室。そこに残された、一口かじられたアンパン。
ふとみると、
アンまで届いていなかった。
おじいちゃん・・・アンパンなのにアン食ってねえべ!!!!!
※この物語はフィクションです。